ご主人さまは旦那さま 記念SS 4
初めての、そして突然すぎる告白から数か月。
あれから思い出したように告白されては断るという奇妙な日々を送っていた。
断り続けるのも気が引けて、今日は食事に付き合ってしまっている。
「俺のどこがそんなに気に入らないのか、参考に聞かせてくれ」
気に入らないわけではないと説明する。ただ、理解が及ばないだけだった。
篠宮さんほどのエリートならば私以上の女性を五分と経たずに落とせるだろう。
いくら鬼だの何だのと言われていても、この人は将来性と顔の良さから非常に女性人気が高い。
それを考えて、少し胸が痛んだ。
「質問を変える。……どうして、俺とは付き合えないんだ」
ここで全てを終わらせるべきだろうと、私では釣り合わないことを訴える。
しかし。
「嫌いなら嫌いだと言ってもらった方が助かる」
ほんの微かに篠宮さんが寂しそうな表情を見せたのがたまらなかった。
胸がいっぱいになって、本当の気持ちをぶつける。
冷たく見えても私のことを気遣ってくれること。
何度も繰り返された告白も、断られればすぐに引いてくれたこと。
その度に自分を改めようと尋ねてきてくれたこと。
どれだけ大切に、慎重に距離を縮めてくれようとしていたのか分かる。
だから――私だって好きになってしまった。
「今、もう一度告白したらどう答える?」
あの時は無理だと即答した。だけど、今回は……。
「意見を一蹴されても頑張る姿に惹かれた。たぶん一目惚れだったんだろう」
告白に答えた瞬間、抱き締められてキスされる。
こんなにせっかちで情熱的な人だなんて誰も教えてくれなかった。
だけど心のどこかでは知っていた。
見つめる瞳が優しいことも、かけられる声が甘いことにも気付いていたから。
「お前が、好きだ」
これが私たちの始まり。
この日から恋人になり、そしてあっという間にプロポーズされて結婚した。
篠宮さんという呼び方から幸広さんに。
しかし、うちの旦那さまには少々困った点があった。
頑張る私が好きなのはいい。その頑張らせ方がズレていなければ。
それを受け入れてしまう私も、結局相性がよかったということなのだろう。
ドSなのはベッドの上でもそうなのだと知るのはもう少し後のこと――。