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​ご主人さまは旦那さま 記念SS 3

 

 思いがけず篠宮さんとの交流は深まった。

 顔を合わせれば世間話をするし、連絡先も交換している。

  休日はどこかへ出かけようと誘われることも少なくなかった。

 はたから見れば――交際しているようにしか見えない。

 

「乗るか?」

 

 乗り込もうとしたエレベーターにはたまたま篠宮さんが乗っていた。

 一瞬ためらったものの、断るのもわざとらしい。

 頷いた私が乗り込むと開いていたドアを閉じてくれた。

 そうして、二人きりになってしまう。

 

「……最近、避けられている気がするんだが」

 

 来た、と身構える。

 そう、私はこの数日篠宮さんを避けてしまっていた。

 もちろんあからさまに無視するようなことはしない。

  ただ、誘われても断るようにしているだけで。

 

「何かしてしまったのなら謝罪する。なぜ、俺を避けるんだ」

 

 本当に不思議そうに聞かれて、こっちの方が混乱した。

 つっかえつっかえ、なぜ自分を誘うのかが分からないと伝える。

 

「好きだから、以外に理由があるのか?」

 

 突然の告白によろめく。

 雰囲気のない会社のエレベーターで、業務報告をするような顔のまま告白されてしまった。

 何かの間違いかと思いたいけれど、篠宮さんは至って真面目だ。

 

「この際だから伝えておこう。俺と付き合ってくれ」

 

 ほぼ即答で無理だと返し、ちょうど開いたエレベーターから急いで逃げ出す。

 篠宮さんは追いかけてこない。

 けれど、そのまま諦めるような人ではないことをこれから数か月かけて知ることになるのだった。

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